一軒のゴミ屋敷がその周辺地域の「資産価値」に深刻な悪影響を及ぼす可能性がある。この事実はあまり知られていませんが不動産の専門家にとっては常識です。マイホームを購入しようとする人がその地域の物件を見に来た時、もし近隣にゴミが溢れ異臭を放つ家があれば一体どう思うでしょうか。ほとんどの人が「こんな環境の悪い場所には住みたくない」と購入をためらうか、あるいは大幅な値引きを要求するでしょう。ゴミ屋敷の外観は単なる景観の問題ではなく周辺の不動産価値を直接的に引き下げる強力なマイナス要因となるのです。不動産の価値は物件そのものの状態だけでなくその「住環境」によっても大きく左右されます。静かで清潔で安全な街並みはそれ自体が価値のある「付加価値」です。ゴミ屋敷の存在はこの最も重要な住環境を根底から破壊します。悪臭や害虫の発生は快適な生活を妨げます。放火や火災の危険性は地域の安全を脅かします。そして異様な外観は街全体のイメージを損ない「治安が悪そうだ」「住民の意識が低いのではないか」といったネガティブな印象を与えてしまいます。これらのマイナス要因は不動産査定において明確な減点対象となります。特にゴミ屋敷の隣や真向かいの物件はその影響を直接的に受け、通常の相場よりも1割から2割、あるいはそれ以上査定額が低くなってしまうことも珍しくありません。またたとえ自分の家が売りに出されていなくても地域全体のイメージが悪化すれば、将来的にそのエリア全体の地価が下落していく可能性も否定できません。このように一軒のゴミ屋敷を放置することはその家の所有者だけでなく、何も悪くない周辺住民の大切な「資産」をも静かにしかし確実に蝕んでいく行為なのです。これはもはや個人の問題ではなく地域コミュニティ全体の財産を守るための共通の課題として認識されるべき問題と言えるでしょう。
ゴミ屋敷の外観と資産価値への影響