増加の一途を辿る空き家のゴミ屋敷問題に対し、全国の自治体はこれまでの「個人の権利尊重」という消極的な姿勢から、公衆衛生の維持と地域住民の安全を最優先とする積極的な介入へと、その方針を大きく転換させています。空き家内部の不用品が溢れ出し、崩壊の危険や異臭被害が深刻化した物件については、自治体が条例に基づき所有者に対して断捨離や修繕を命じる勧告を行い、改善が見られない場合には氏名の公表や過料、さらには行政代執行による強制撤去が行われます。行政代執行は所有者の意思を無視して物理的に問題を解決できる強力な手段ですが、自治体にとっても数百万から一千万単位の公金を一時的に立て替える必要があるため、実施には慎重な判断が求められるのが現状です。撤去にかかった費用は後に所有者に全額請求されますが、支払い能力がない所有者の場合は不動産を差し押さえるなどの法的な回収手続きが取られるため、所有者にとっては取り返しのつかない経済的破綻を招く恐れがあります。最近では、ゴミ屋敷化した空き家を早期に発見するために、郵便局員や宅配業者、検針員などと連携した「見守りネットワーク」を構築する自治体も増えており、問題が深刻化する前のソフトな介入が重要視されています。また、空き家の整理を促進するための補助金制度や、空き家バンクを通じた利活用の相談窓口を充実させることで、所有者が自発的に断捨離に取り組める環境作りも進められています。空き家のゴミ屋敷問題は、もはや個人の手に負えないケースが多く、自治体という公的な枠組みと、福祉的なアプローチが連携しなければ解決は不可能です。現在は、ゴミ屋敷専門の買取業者や、再生を前提とした投資家向けのリノベーション物件市場も充実しており、適切な断捨離を行うことで、負の遺産だと思っていた空き家が、意外な高値で売却できる可能性も十分にあります。空き家を売却することは、所有者としての重い責任から解放され、新しい人生の資金を手に入れるための前向きなスタートです。私たちは、行政代執行という強硬手段が取られる前に、所有者自身が地域のコミュニティと繋がり、適切な支援を受けることで、空き家を負の連鎖から救い出す社会的な仕組みをより強固なものにしていく必要があります。