ゴミ屋敷に直面したとき、必ずしも相続放棄だけが正解とは限りません。状況によっては、あえて相続を承認し、自腹を切ってでも片付けを断行することが、長期的には大きなメリットを生むこともあります。まず、相続する最大のメリットは、その土地が持つ潜在的な価値を自分のものにできる点です。もし実家が都心部や駅に近い好立地にあるならば、数百万円の清掃・解体費用を支払ったとしても、更地にして売却すれば数千万円の利益が出る可能性があります。このような「出口戦略」が明確な場合は、相続放棄はかえって損な選択となります。また、実家に愛着があり、どうしても親の家を守りたい、あるいは将来的に自分が住みたいという感情的な価値がある場合も、相続は有力な選択肢です。一方で、相続する際のリスクは、想定外の負担が増大することです。ゴミの下から多額の借用書が出てきたり、土壌汚染が発覚したり、建物がアスベストを含んでいるために解体費用が倍増したりするリスクは、実際に片付けを終えてみないと完全には把握できません。また、清掃作業中に近隣のフェンスを壊してしまったり、火災を起こしてしまったりといった、作業自体に伴う事故のリスクも相続人が負うことになります。相続放棄を選んだ場合は、これらすべてのリスクと金銭的負担から解放される代わりに、土地から得られる収益を一切手にすることはできません。この比較において最も重要なのは、情報をどれだけ正確に集められるかです。ゴミの総量、建物の状態、土地の時価、近隣の売買実績などを精緻に調査し、収支がプラスになる確率が極めて高いと判断できたときのみ、相続の承認へ進むべきです。逆に、少しでも不確定要素が多いと感じるなら、安全策として相続放棄を選ぶのが定石と言えます。ゴミ屋敷の相続は、一種の投資判断に近い側面を持っています。感情的な責任感と、冷徹な損益計算を天秤にかけ、自分と家族の将来にとってどちらが実利をもたらすかを、フラットな視点で評価することが求められます。どちらの道を選んでも、相応の覚悟が必要ですが、しっかりとした比較検討に基づいた決断であれば、その後どのような結果になっても納得感を持って受け入れることができるはずです。