私は長年、多くのクライアントのスタイリングを手がけてきましたが、外見を劇的に変えることができる人とそうでない人の決定的な差は、実はその方の自宅の状態にあります。カウンセリングをしていると、どんなに高価なスーツやドレスを提案しても、どこか野暮ったさが抜けない方がいらっしゃいます。詳しくお話を伺うと、大抵の場合、部屋が物で溢れていて整理整頓ができていないことが分かります。部屋が汚いと、どんなに素晴らしい服を買っても、その保管状態が悪いために服が持つ本来のシルエットが崩れてしまいます。湿気の多い部屋に詰め込まれた服は、生地が弱り、発色もくすんで見えるようになります。スタイリストの視点から言えば、服は「着ている時間」よりも「保管されている時間」の方が長く、その環境が外見のクオリティを左右するのです。また、部屋が散らかっている人は、朝のコーディネートに時間をかけることができず、結果として色の組み合わせやバランスがチグハグになりがちです。一方で、部屋が整っている方は、クローゼットの中も厳選されたアイテムが美しく並んでおり、自分に似合うものを瞬時に選ぶ直感力が養われています。その自信に満ちた選択が、着こなしの「オーラ」となって外見に現れるのです。さらに、清潔感というのは単なる汚れの有無ではなく、その人が纏う空気感の問題でもあります。整った部屋で深い睡眠を取り、規則正しい生活を送っている人の肌は内側から光を放ち、姿勢も自然と正されます。これこそが、どんなメイクや衣服も及ばない究極の外見美です。私はクライアントに「まずクローゼットを空にして、床を拭いてください」とアドバイスすることもあります。服を変えることは容易ですが、自分を包む環境を変えない限り、本当の意味で洗練された印象を他者に与え続けることはできません。外見の美しさは、住まいという器の美しさに比例するものであり、プロの目から見れば、その人の部屋の清潔度は、その人の纏う一枚のシャツの襟元にすべて集約されているのです。
プロのスタイリストが語る清潔感と部屋の関係