実家がゴミ屋敷と化してしまった場合、相続人はその膨大な片付け費用や家屋の解体費用、さらには土地の資産価値を天秤にかけ、最終的に相続放棄という選択肢を真剣に検討せざるを得ない状況に直面することが多々あります。相続放棄とは、被相続人の権利や義務を一切引き継がないという法的な手続きであり、プラスの財産だけでなく、マイナスの財産や今回のゴミ屋敷のように清掃という重い負担もすべて拒否することが可能になります。しかし、相続放棄を選択するためには、自己のために相続の開始があったことを知った時から三ヶ月以内という極めてタイトな熟慮期間内に、家庭裁判所へ申述を行う必要があります。ゴミ屋敷の場合、一見して資産価値がないように思えても、土地の立地条件や他の遺産の有無によっては、相続したほうが有利になるケースも稀に存在するため、事前の財産調査は欠かせません。一方で、ゴミの処分費用が数百万円単位に及ぶケースや、建物の老朽化が進み倒壊の危険がある場合などは、経済的な合理性から見て相続放棄が最も賢明な判断となることが多いのが現実です。ここで注意しなければならないのは、ゴミ屋敷の清掃を少しでも手伝ったり、中の遺品を勝手に処分したりしてしまうと、法律上の法定単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるリスクがある点です。良かれと思って行った片付けが、結果として自分を窮地に追い込む可能性があるため、相続放棄を検討している段階では、現場のゴミや遺品には一切手を触れず、現状を維持したまま専門家や家庭裁判所に相談することが不可欠です。また、相続放棄が認められたとしても、令和五年の民法改正により、その財産を現に占有している場合には、次の相続人や相続財産管理人に引き渡すまでの管理義務が残る点にも留意が必要です。相続放棄という決断を下す前に、まずは物件の正確な状況把握と、将来的なリスクの精査を専門家のアドバイスを受けながら進めることが、相続人としての生活を守るための最善の策と言えるでしょう。
ゴミ屋敷の相続放棄を検討すべき法的根拠と判断基準