私たち特殊清掃員の仕事は、単にゴミを運び出すことだけではありません。現場に残された物の山から、そこに住んでいた方の人生や心の有り様を読み解くことも重要な役割の一部です。これまで数多くのゴミ屋敷に立ち会ってきましたが、アスペルガー症候群の特性を持つ方の部屋には、他のゴミ屋敷とは明らかに異なるいくつかの特徴が見られます。最も顕著なのは、特定の物に対する異常なまでの執着と、それが特定のパターンで配置されているという点です。例えば、千個以上の空き缶がラベルの向きを完璧に揃えて整列していたり、数十年分の新聞紙が日付順に一寸の狂いもなく積み上げられていたりします。世間一般ではゴミと称される物であっても、その配置には明確な「意志」と「秩序」が感じられるのです。しかし、その特定の秩序を守ることにエネルギーを使い果たしてしまった結果、排泄物の処理や食べ残しの廃棄といった「生きるための基本的なメンテナンス」が完全に放棄されてしまっている、という極端なコントラストが現場には存在します。アスペルガー症候群の方の現場では、清掃作業は非常にデリケートな慎重さを求められます。彼らにとって、物の位置が変わることは世界の崩壊を意味することさえあるからです。作業中に「これは捨ててもいいですか」と尋ねると、多くの場合は論理的な理由を並べて拒絶されます。しかし、私たちは彼らの論理を否定しません。代わりに、そのこだわりの対象を大切に保管するための「新しい秩序」を提案します。「汚れた状態で置くよりも、洗ってこの箱に収めた方が、あなたのコレクションとしての価値が守られますよ」といった、彼らの価値観に沿った説得を行うのです。私たちはゴミを運び出した後、部屋をただ空っぽにするのではなく、彼らが混乱せずに生活できるよう、物の定位置をラベルで示したり、整理整頓のルールをマニュアル化して渡したりすることもあります。特殊清掃という極限の現場を通じて感じるのは、彼らがだらしないのではなく、あまりにも純粋に自分の世界を守ろうとして、現実に追い詰められてしまったという悲痛な事実です。清掃員としての私たちの本当の成功は、部屋を綺麗にすることではなく、住人が自分の特性と共存しながら、誇りを持って新しい一歩を踏み出すのを助けることにあるのです。
特殊清掃員が見たアスペルガーの現場