令和五年に施行された改正民法により、ゴミ屋敷の相続放棄を巡る管理義務のルールが大きく見直されました。これまでは、相続放棄をした後も次の相続人が管理を始められるようになるまで、その財産を管理し続けなければならないという曖昧な義務が存在し、放棄したはずのゴミ屋敷の責任をいつまでも問われる不安が相続人の間で根強くありました。しかし、改正後の新ルールでは、管理義務が発生するのは「相続放棄の時に相続財産を現に占有している場合」に限定されることが明確化されました。つまり、被相続人と同居しておらず、実家を直接支配・管理していない状況であれば、相続放棄と同時に管理義務からも解放される可能性が高まったのです。これはゴミ屋敷の相続放棄を検討している遠方の親族にとって、非常に大きな救済措置となります。一方で、実家に住んでいたり、頻繁に出入りして鍵を管理していたりした場合は、「現に占有している」と判断されるため、放棄後も管理責任が残る点には厳重な警戒が必要です。管理義務が残る場合、ゴミ屋敷のせいで害虫が発生したり、不法投棄の温床になったりして近隣に被害が出れば、損害賠償を請求されるリスクが継続します。この責任を完全に解消するためには、家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立て、その管理人に財産を引き渡す必要があります。ただし、この申し立てには数十万円から百万円程度の予納金が必要になることが多く、ゴミ屋敷の清掃費用を免れるために相続放棄をしたはずが、結局は管理人選任のコストがかかってしまうというジレンマに陥ることも少なくありません。改正民法の意図は、所有者不明の土地や放置された建物の管理を明確にすることにありますが、ゴミ屋敷のような特殊な物件では、自分が「占有者」に該当するかどうかの判断が難しく、一歩間違えれば法的なトラブルに巻き込まれます。したがって、相続放棄をする際は、単に申述を受理されるだけでなく、自分に管理義務が残っているのか、もし残っているならどうやってその責任を移転させるのかという点まで含めて、弁護士などの専門家と綿密に打ち合わせを行うことが不可欠です。法改正によって一部の負担は軽減されましたが、ゴミ屋敷という負の資産が持つ影響力は依然として大きく、新時代のルールに則った的確な対応が求められています。
民法改正による相続放棄後のゴミ屋敷管理責任の範囲と注意点